
夫54歳、妻37歳。
「残りの人生は、静かに美味しいコーヒーを飲んで終えようね」と言い合っていた我々。
それが、まさかの「妊活してみる?」という爆弾発言から始まったのだから、人生とは本当に油断ならない。 きっかけは、甥っ子の可愛さに妻が衝撃を受けたことだった。
ある日、妹夫婦の家に遊びに行った妻が、帰ってくるなり目を輝かせて言った。
カピーねぇ、赤ちゃんって……すごいのよ! ミルク飲んで、寝て、笑うの! しかも、あの手、豆粒みたいなのにあったかいの!
……それ、赤ちゃんの説明としては正しいけど、語彙が幼児並みだよね?
と思いつつも、妻のテンションは最高潮。



一回だけ、妊活してみようか
いや、“一回だけ”って、まるで試食コーナーのノリ。
だが、夫たるもの、妻の真剣な目を見たら逃げられない。
こうして我々は産婦人科へ向かった。
そこにいたのは、禿げた陽気なベテランおじいちゃん先生。
頭はピカピカ、笑顔は満点。
妻に向かってはにっこりと「高齢出産になりますが、大丈夫ですよ」
そして私には――
男の年齢なんて関係ない!問題は養育費があるかどうかだ!
……そこ!? 愛とかロマンとかじゃなくて、まず財布の中身!?
反射的に「はい、あります!」と答えた私。
その瞬間、先生はニカッと笑い、「なら、あとは愛の努力だけだね!」と親指を立てた。
まるでロックな産婦人科。
それからの日々は、まさに異次元。
寝室は妊活グッズで埋まり、冷蔵庫には葉酸サプリ。
妻は基礎体温を記録し、私は青汁と亜鉛を常備。
「今がチャンス!」と言われれば、まるで宇宙ミッションの発令。 時々ふと思う。



俺、57歳で子育てって本当に大丈夫なのか?
正直、腰も肩も劣化が進んでいる。
でも、妻が笑うたびに「まぁ、なんとかなるか」と思えてくる。
これから先、眠れない夜も、オムツ交換も、未知の挑戦が待っている。
けれど――人生の後半に、こんなドキドキが待っているとは。
――異次元夫婦、まだまだ現役です。
異次元夫婦の実写に近づけたプロフィール




コメント