
地獄の4ヶ月入院を経て出産したら、今度は赤ちゃんが入院!
4ヶ月の入院を経て、ようやく産声を聞いた――そう思ったのも束の間。
「赤ちゃんはNICUで経過をみます」
医師の言葉に、胸の奥がぎゅっと掴まれた。

えっ、NICUって……?



新生児集中治療室。大切に見てもらえる場所だ
冷静に答えるレッサー(夫)に、私は思わず声を荒げる。



集中治療って、病気の人が行くところじゃないの!?



いやいや、大丈夫だ。赤ちゃんは小さいから念のためで――



念のためなら普通の部屋でよくない!?



……ツッコミが鋭すぎて俺の心臓がNICU入りしそうだ
笑いながら誤魔化そうとするレッサー。けれどその手のひらが冷えているのを、私はちゃんと知っていた。
数日後。感染症の疑いで面会禁止。



赤ちゃんに会えないなんて……



うん、きっとすぐによくなる



すぐって、どのくらい?1時間?1日?それとも……
言葉が詰まってしまう。頭の中は最悪の想像ばかり膨らんでいく。



なぁカピー、俺だって不安だよ



じゃあ、なんでそんなに落ち着いていられるの?



57年も生きてりゃ、顔くらいはポーカーフェイスできる



……ズルいよ



でも心の中じゃ、カピーより100倍あたふたしてる



それ、顔に出してよ!



いや、出したら夫婦で号泣漫才になるだろ?



……泣き笑い芸か
やっと面会許可が出た日。
ガラス越しに見えた小さな体。腕には点滴の管が繋がれ、青あざがいくつもできていた。胸や鼻には管。



……なんでこんな小さな子が
声が震える。止められない涙。



カピー……



痛いだろうな、苦しいだろうなって考えると、もう耐えられない



……俺も同じだよ
レッサーは私の背中に手を回し、絞り出すように言った。



でもな、この子は強い。俺たちが思うよりずっと



……



だから俺たちは信じるしかない。泣きたいときは泣いていい。俺は横でオロオロするから



……いつも通りじゃん



そうだ、俺は一生オロオロ担当だ



じゃあ私は?



カピーは泣き笑い担当



そんな役割分担いらない!
涙に混じって、小さく笑いがこぼれる。
不安で押しつぶされそうなとき、彼は必ず横で“ズレたボケ”を放り込んでくる。それが私の呼吸をつなぎとめてくれる。
NICUを出て帰り道。



ねぇレッサー



ん?



……私、今日あなたに惚れなおした



え?今さら?



今さらよ。だって、本当に辛いときに隣にいてくれたから



いやいや、俺なんか大したことしてないぞ?ただ、突っ込まれたりオロオロしたり……



それで十分なの



……そうか。じゃあ俺も言わせてもらう



なに?



カピー、点滴や管を見て泣いたときの顔、すっごく綺麗だった



なにそれ!今そんなこと言う!?



俺も惚れなおしたってことさ



……もう、年の差とか関係なくて、ただの惚気夫婦じゃん



その漫才、ずっと続けような
夕暮れの帰り道、まだ不安は尽きない。
でも、ふたりで泣いて笑えるなら、この先どんな嵐でも乗り越えていける。
旦那とのなれそめ


私たち年の差夫婦のプロフィール


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