
心を読む妻。顔にでる旦那。
夜。雨が窓を叩く音だけが、静かなリビングに響いていた。
テレビの明かりがゆらめき、レッサー(旦那)はぼんやりとスマホをいじりながら呟いた。

ほら…なんやったっけ。赤ちゃんがハイハイの前にやるやつ……
思い出せそうで思い出せない。
頭の奥でモヤモヤが渦巻く。
その瞬間、背後から――柔らかい声がした。



ずりばい、でしょ?
ゾクッ。背筋を冷たいものが走る。
振り向くと、カピー(妻)がソファに座り、湯気の立つお茶を持ったまま、にっこり笑っていた。



……なんで、わかったん?



あなた、顔に出てるから。
一瞬、時が止まったようだった。
顔に……出てる?
確かにカピーの視線は、じっとレッサーの表情を追っている。



さっきから眉が“ず”の形してたの。



そんなアホな!
レッサーは慌ててスマホのカメラを開いて自分を映す。
……眉が確かに、ずっと“ず”っぽい。
怖い。いや、ちょっと笑える。
しかし、それは始まりにすぎなかった。
数日後、夕食のテーブルで。



今日の晩ごはん、何がええかな~って思ってるでしょ?
カピーがゆるりとつぶやく。



えっ……



エビフライか唐揚げで迷ってるよね?



……なんでわかるん!?



だって、目が“プリッ”ってしてたもん



どんな観察力やねん!
怖い。けど、ちょっとかわいい。
そんな複雑な感情が胸を支配する。
その夜、寝る前。レッサーがベッドでこっそり考えていた。
“明日は内緒でコンビニのプリン買って帰ろ…” すると――



プリン、2個買ってきてね
カピーの声が闇の中から聞こえた。



な、なんで知ってるん!?



ふふ。もう全部見えるの。あなたの心の中が。
その瞬間、雷が光り、部屋が白く照らされた。
カピーの顔が一瞬、影になって見える。
笑っているのか、見透かしているのか――わからない。



やめてくれぇぇ!
レッサーは布団にもぐりこみ、震えながら呟いた。



もう、何も考えへん……
カピーは静かに笑う。



無理だよ。あなた、考えてる顔してるもん。
――そう、レッサーは表情にすべてが出る男。
そしてその顔を読み切るカピー。 こうして“占い師カピー”は誕生した。
夫婦の夜は、少しだけスリリングで、でも確かに愛に満ちていた。
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