
ウキウキの朝帰り『50代男子、夜のカラオケで青春する』
(妻視点)
時計の針が、0時をまわった。
カチャッ。玄関のドアが開く音。
カピー……(帰ってきた)
レッサー、帰宅。
酔っ払い特有のテンション。顔がテカテカしてる。
旦那はお酒飲めません!



ただいまぁ〜!いや〜今日、すっごかったわ!!



はぁ?
どうやら同期3人でカラオケに行ったらしい。
50代男3人、テンション爆上がり。
それぞれ、学生時代の曲で大合唱。



“愛は勝つ”歌ったらな、みんなで泣いた!



うるさい同窓会か



いやぁ〜“少年時代”もヤバかった!まんじゅうボーイなんか、間奏で目閉じてた



目、閉じたまま寝てたんじゃないの?
レッサー、止まらない。



ミーノがタンバリンのリズム外してさ〜!



俺、ハモったんだよ!



最後は“世界に一つだけの花”で肩組んで…!



……はいはい、よかったねぇ
でもその顔。
ほんとに楽しそう。
まるで修学旅行の夜みたいに。



で、帰りはなんで0時過ぎ?



いや〜“あと一曲だけ”が15回続いちゃって!



……中学生か



だってさ!あんなに笑ったの久しぶりだったんだよ!



ふぅん。いいね。青春再放送って感じ
カピーは言いながら、ちょっと羨ましくなった。
最近、そんな無邪気に笑ったことあったっけ。



なぁカピー、今度一緒に行く?



いや、私はいい。……ていうか私もカラオケ行ってない!



一緒に行こうよ



違うの!“1人”で行きたい!



えっ!? ひとり!?



好きな曲を誰にも邪魔されず歌って、泣いて、アイス食べて帰る。それが最高の夜!



なんか修行みたいになってるけど!?



あなたたちは“友情の夜”でしょ?私は“解放の夜”よ



……カラオケって、そういう哲学的な意味あったっけ?



あるの!



でもさ、1人で行っても誰もハモってくれないぞ?



ハモらなくていいの。私は、私の歌でいい



……なんか名言っぽい



今、いいこと言った
夜中0時半。
レッサーはソファで寝落ち、
カピーはスマホで“ひとりカラオケのおすすめ店”を検索していた。
検索結果の一番上には、こう書かれていた。
思いきり歌いたい夜は、誰にも合わせず、好きな自分を取り戻す時間に。
カピー、ニヤリ。



よし、予約しよ。
旦那の友達はおもしろい!




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