
待合スペースにいる客、全員10代。
——久々に、旦那が同期とカラオケに行くことになった。
旦那含め、全員50代。
懐かしさと再会の嬉しさでテンションは高め。
「歌うぞ〜!」というより、「しゃべるぞ〜!」の集まりだ。
店に入った瞬間、違和感が襲う。
見渡す限り、若い。
若すぎる。
待合スペースにいる客、全員10代。
受付表には
【カエデ 16】【ナギ 18】【キクエ 17】
——青春の名札がずらり。
50代、ゼロ。
一気に空気が変わる。
同期の一人が小声で言う。
「……場違いじゃね?」
旦那は心の中でうなずく。
(完全に迷い込んだ)
そのとき、店員が現れた。
笑顔。爽やか。
しかし旦那は感じた。
——この人、悪魔だ。
(こいつら、値段見てないな)
(久々再会でテンション高いな)
(よし、高い部屋いこう)
そんな心の声が、なぜか聞こえた気がした。
店員の一言に、
旦那たちは顔を見合わせる。
広めのお部屋、ご案内できますけど?
値段?
見てない。
久々の再会?
楽しい。
テンション?
高い。
レッサー……ええよ
即決。
こうして、
10代に囲まれながら、
50代3人は一番広そうな部屋へ消えていった。
しかし——
歌わない。
誰もマイクを取らない。
曲も入らない。
代わりに始まるのは、



そういえばさ
あの頃さ
覚えてる?
気づけば、
失恋の話、
バカやって怒られた話。
時間だけが溶けていく。
外では10代が最新曲で盛り上がり、
中では50代が青春時代に戻って盛り上がる。
歌わないカラオケ。
でも満足度は高い。
高い部屋?
高い料金?
誰も気にしていない。
久々に、
ただ“楽しかった”が勝った夜だったらしい。
——ちなみに帰宅後、
旦那は一言。



カラオケなのに、
一曲も歌わなかったわ
それでいい。
それが50代の楽しみ方だ。
旦那の友達はおもしろい!




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