
娘の名前をどうするか――
それは、17歳年の差夫婦にとって人生レベルの大仕事だった。
カピー一生呼ぶ名前だからね



失敗は許されへん
なぜか会議の空気は重い。株主総会みたい。



あーちゃん?



かわいいけど、近所に三人いる気がする



たーちゃん?



優しそうだけど、将来“たーちゃんの父”って呼ばれる覚悟がいる



なーちゃん?



もうそれ、全人類が一度は通るやつ
夜な夜な繰り返される“ちゃん付け音読会”。
みーちゃん、りーちゃん、ひーちゃん……
候補は増えるのに、決定打がない。
年の差夫婦にとって、娘は奇跡の一人。
だからこそ、名前だけは絶対に外したくない。
「適当に決めた感」だけは、どうしても避けたかった。
そんなある日。
ふとした瞬間に、二人同時に口にした。



……つーちゃん



……つーちゃん
空気が変わった。



なんか、いい



響きがやわらかい



呼びやすいし、年取っても違和感ない
漢字も見た瞬間、ピンと来た。



あ、これや



つーちゃんにしよう
ついに決定。
長かった戦いが、終わった。
ウキウキした気分で、旦那(レッサー)はスマホを手に取る。



ちょっと入力してみるわ
音声入力モード、オン。
スマホに向かって、はっきりと。
満面の笑みで。
少し誇らしげに。



つーちゃん
——ピロン。
画面に表示された文字。
【2ちゃん】
一瞬、時が止まる。



「……」



「……」
次の瞬間。



なんで2ちゃんやねん!!!
完全にスマホにキレる57歳。
相手はAI。勝ち目ゼロ。



いや、違う違う!



うちの娘は掲示板ちゃう!



なんで“つ”が数字になるんや!
私は横で腹を抱えて笑う。



落ち着いて。スマホ悪くない



いや悪い!今のは完全に悪意ある変換や!
その後、手入力で無事「つーちゃん」と表示され、
画面を見つめてニヤニヤする旦那。



……ちゃんと“つーちゃん”?



当たり前です
こうして、
17歳年の差夫婦の一人娘の名前は、
一瞬だけ“2ちゃん”になりかけたけど、
無事に“つーちゃん”に決まった。
スマホはたまに裏切る。
でもこの家族は、今日も平和です。
旦那が娘にデレデレ




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