
一度寝るとリセット?まるで、知らないおじさん扱い。
うちの旦那――つーちゃんの父であり、
心は永遠の5歳児みたいな57歳。
そんな旦那が昨日、久々に娘と再会した。
つーちゃんは1週間ほど義父母の家で過ごしていた。
義母に甘やかされ、義父に抱かれ、ぬくぬくと姫のような暮らし。
そこへ満を持して登場したのが旦那である。 朝、つーちゃんがむにゃむにゃと目を開けた音がして、
旦那はもう犬の散歩前みたいなテンションで立ち上がった。
レッサーおっ、つーちゃん起きたかな?
声だけでウキウキが漏れ出てる。 その時の私はというと、



やめとけ…そのテンション、危険だぞ…
という思いを胸の奥にしまいながら、
そっと見守るポジションに回った。
旦那は意気揚々と寝室へ。
扉が少し開き、そこから覗く旦那の顔は、
“好きなアイドルに会いに行くオタク”くらいの期待値を背負っていた。



つーちゃ〜ん。パパだよ〜
……その瞬間。
つーちゃんの顔つきが、
“まるで知らない訪問販売が部屋に入ってきた時の顔”になった。



……うー……うーー……
嫌な予感しかしない。
旦那は気づかず更に近づく。



つーちゃん、パパだよ? 会いたかったよ〜
私は思わず心の中でつぶやく。
(やめろ、距離を詰めるな。逃げろ。)
次の瞬間――



ギャアアアアアアアーーーーー!!!!
寝室の空気が一変した。
旦那は衝撃で固まり、
私はキッチンからそっと様子を伺いながら、
心の中で深く頷いた。
あぁ、完全に忘れられている。 旦那は震える声で



……え? つーちゃん……パパ……だよ?
と呟いたが、つーちゃんは



ギャーーー!!!(誰!?)
ギャーーーー!!(助けてー!!)
と全力の警戒モード。
それを見ていた私は――
笑ってはいけないと思いながらも、
口元に浮かぶニヤニヤを抑えるのに必死だった。
いやだって、
数日で娘に忘れられる父、
そんなレア生物、
見た瞬間ツッコミが頭の中で飛び交ってしまう。



ねぇ旦那さん、泣きたいのはこっちだよ



つーちゃんのなかで“誰おじさん”カテゴリ行きになってるよ



次からは挨拶よりアイスを持って登場したほうがいいよ
そんな言葉が脳内で踊り狂う。
しかし、私は妻であり母である。
ここは優しくフォローしてあげるのが役目。 私はそっと旦那の背中に手を置き、



大丈夫、またすぐ思い出すよ
と励ました。 旦那は、少し涙目になりながら



……本当……?
と聞いてきた。
うん、本当。
ただし“すぐ”とは限らないけど。
それでも、頑張る父の背中はちょっと愛しい。
娘に拒否られながらも、
今日も旦那はつーちゃんへの愛を積み上げていく。
そして私はその様子を、
静かに、そしてこっそり笑いながら見守っている。
前にも娘に忘れられていた父




コメント